南が丘動物通信

口鼻瘻管 16年07月17日

 口鼻瘻管は、口腔と鼻腔の間の歯槽骨が破壊されることにより、瘻管が形成され貫通してしまう疾患です。主な原因は歯周病ですが、その他に外傷、異物の貫通、咬傷、電気ショック、口腔内腫瘍などの報告があります。犬で比較的多くみられ、猫では稀です。いずれの犬種でも見られますが、長頭種、特にダックスフンドやトイ・プードルなどの小型犬に多くみられる傾向があります。

 本症は、上顎歯に歯周病などが存在することにより、口腔と鼻腔を隔てている厚さ1~2mmほどしかない上顎骨が吸収されて、上顎骨の直上に位置する鼻腔に貫通してしまうことにより引き起こされます。

 症状は、くしゃみや片側性あるいは両側性の鼻汁や鼻出血がよく認められます。主に原因となる歯は、上顎犬歯、上顎第3切歯、上顎第2前臼歯ですが、これ以外にも上顎歯であればいずれも本症を引き起こす可能性があります。

 診断は、肉眼ですでに罹患歯が重度の歯周病により脱落して存在せず、鼻腔が確認できる状態であれば口鼻瘻管であることが明らかですが、通常は容易には確認できないため、上顎歯に沿って歯周ポケットの中に歯周プローブを挿入し、同側の鼻腔から出血が見られれば口鼻瘻管と診断します。特に上顎歯の動揺が強ければ本症の疑いがあります。口腔内X線検査にて上顎歯の歯槽骨の吸収像が確認できることがあり、その場合確定診断が可能ですが、はっきりと確認できない場合も少なくないため、最終的な診断方法はCT検査になります。このような画像診断は、異物の存在や腫瘍に伴って生じた骨融解などとの鑑別に非常に役立ちます。

 本症を放置すると慢性鼻炎、副鼻腔炎および肺炎を引き起こす可能性があるため、治療は必須です。口鼻瘻管の原因となっている歯が残存していれば抜歯を行ってから欠損部を封鎖し、術後は抗菌薬を投与していきます。通常は適切な手術を行うことで治癒に向かいます。しかし、縫合部位を前肢で気にしたり、床に縫合部位を擦り付けたりすることで縫合部位が開くことがあるため、術後管理が肝要になります。

T.H.