南が丘動物通信

新しい猫の変形性関節症の治療薬が出ました! 23年05月22日

元気な猫ちゃんがお気に入りのおもちゃに反応しなくなったり、足を引きずって歩くようになっていませんか?それは変形性関節症のサインかもしれません。

変形性関節症は猫に非常に多く認められる疾患で、12歳以上の高齢猫全体の61%~93%がX線検査で変形性関節症を有していることが報告されています。人間も年をとってくると膝や腰に痛みが出るのと同じように猫ちゃんでも高齢になると関節に炎症を引き起こす可能性があります。特に肘、手首、膝が一般的です。

ただ、猫ちゃんはかなり我慢強いので、基本的には症状を隠してしまいます。

変形性関節症の症状としては、歩く、登る、トイレに行くなどの動作が困難になります。

具体的には、遊ぶことが減り、ジャンプができなくなる、階段を登らない、トイレ以外に排泄するようになる、よく昼寝をするようになったり、毛づくろいが出来ず被毛の状態が悪くなったり、ひどい時には足を引きずって歩くなどになります。

もちろん、これらは関節炎だけで起こることではないですが、単なる老化と勘違いして様子を見るのではなく、速やかに獣医師に相談することが重要です。

このような生活の質を落としてしまう様なやっかいな変形性関節症ですが、今まではNSAIDsと呼ばれる痛み止めが一般的でした。ですが、NSAIDsは腎臓に負担がかかったり、毎日の投薬が難しかったりと治療したいけどなかなか治療に踏み出せないことも多くありました。

最近まで猫の関節炎の治療に苦慮していましたが、2023年にソレンシアという注射薬が加わりました。

ソレンシアはNSAIDsと異なる機序によって、猫の関節の痛みを軽減するため副作用が少なく、初期の腎臓病の猫などにも安全に使用できることが報告されています。月1回の注射で済むので、毎日の投薬の負担がありません。

ソレンシアを猫ちゃんに毎月投与した場合、約77%の飼い主様が痛みの兆候の改善を実感したという3カ月の調査結果も報告されています。ソレンシアにより変形性関節症が完治するわけでは決してありませんが、痛みの管理や生活の質を大きく改善することが可能です。

ソレンシアはとても安全な薬ですが、有効成分であるフルネマトマブに対してアレルギーなどの副反応(ほとんどは皮膚のかゆみや脱毛)を示してしまう場合には使用できません。また1歳未満または2.5kg未満の猫に使用することはできません。

他にも、妊娠中、繁殖中、授乳中の猫にも使用できません。

またソレンシアの費用は1回当たりの相場が10000円~15000円と高額にはなってきます。決して安い薬ではありませんが、長期的に作用する薬であることや効果の高さ、安全性の高さを考えると、決して高い薬ではないと思われます。

愛猫の動きが悪く、遊ばなくなったり、階段に登れないなどどこか痛そうな場合には、高齢だからとあきらめるのではなく、

一度ソレンシアの月1回注射での治療を検討されることをオススメします。気になることがあれば獣医師に相談し、猫ちゃんの生活の質を上げて健やかに過ごさせてあげましょう。

Y.N.

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