南が丘動物通信

リンパ球形質細胞性鼻炎 14年07月27日

 リンパ球形質細胞性鼻炎はイヌやネコにおける炎症性鼻腔疾患の原因として慢性非感染性鼻炎の中で最も多い疾患の一つです。ヒトではアレルギー性の結膜炎や下部気道疾患を併発することが多いですが、イヌやネコでは一般には併発しません。明確な病因はわかっていませんが、刺激性物質やアレルゲンの吸引、ウイルス感染などにより誘発されるという考えや、免疫介在性であるという説があります。若齢から中年齢のミニチュア・ダックスフンドのほか、ウィペットにも好発します。
 主な症状は、くしゃみ、鼻を鳴らす、漿液性あるいは粘液性の鼻汁排泄が主に両側性に認められます。そして二次性に細菌感染が起こると膿瘍粘液性となり、有色鼻汁となります。時に血様の膿汁が見られることもあります。また粘液性鼻汁が後鼻漏となり、鼻咽頭内に波及すると逆くしゃみ兆候が発現することがあります。本疾患は全身状態の悪化に波及するとことはほとんどありませんが、過度の後鼻漏によって誤嚥性肺炎が起こると死亡する事がごく稀にあります。
 診断は、X線検査、CT検査、MRI検査、内視鏡検査などの画像検査では特徴的な所見は認められず、鼻腔粘膜の生検による病理組織学的検査のみが確定診断につながります。鼻汁検査や細胞診検査では、二次性の細菌が検出されたり、好中球などの炎症性変化が認められるのみで診断価値は低いです。
 本疾患は鼻腔粘膜の免疫異常が考えられるため、治療の目的は根治ではなく、症状のコントロールです。グルココルチコイドや抗菌薬の局所投与や全身投与を行いますが、反応がなかったり、副作用が認められる場合は免疫抑制剤の併用を検討します。粘稠性の鼻汁が貯留することが生活の質を低下させていることから、去痰剤の内服やネブライザー、あるいは加湿器の使用などによって鼻汁の粘稠性を低下させてくしゃみなどによって積極的に体外に排出させたり、咽頭経由で食道内に嚥下させることによって生活の質を向上させることも行います。