南が丘動物通信

常同障害 13年01月08日

 明確な目的を持たずに同じ行動が繰り返されている状態を常同行動といいます。動物の飼育環境が適切でない場合にみられることがわかっており、展示動物や産業動物の飼育現場ではよく観察されています。伴侶動物においても常同行動は頻繁に観察されており、犬ではずっと尾を追い続ける、前肢をずっとなめる等、猫ではずっと布をしゃぶっている、横腹を舐め続けている等、鳥ではずっと羽を抜き続けて胸部の羽がなくなってしまう等が比較的多い常同行動です。
 常同行動のうち、目的もなく日常の生活が送れないくらい異常な行動を行っている状態を常同障害といいます。常同障害は①葛藤、②不安、③フラストレーション等が原因となり引き起こされると考えられています。人を含む動物は葛藤状態、フラストレーションを感じる状況や不安を感じる状況になると、その高揚した気持ちを落ち着かせようと「葛藤行動」を起こします。人においては貧乏ゆすりや爪を噛むなど、動物においては過剰なグルーミングや繰り返し尾を追うなどが挙げられます。このような葛藤行動はストレスとなる状況が落ち着けばなくなる行動ですが、フラストレーションが長く続いたり、大きなストレスが一気にかかったりすると葛藤行動から常同障害に発展します。葛藤行動が常同障害になると、脳内糖代謝や神経伝達物質のバランスが崩れた状態になっていることがわかっており、少しの刺激や脳が何らかの刺激を受けて興奮すると、目的のない繰り返し行動がすぐに発現してしまう状態となります。常同障害にまで発展してしまった場合は環境を少し改善するだけでは動物の行動を制御することができないため、必要であれば薬物療法を含む治療が必要となります。
 常同障害の治療については、個々の症例に応じて異なるため、病院までご相談下さい。