南が丘動物通信

熱中症にご注意を 21年07月02日

今年も暑い夏が来ましたね。タイトルにもあるように今回は熱中症についてです。我々ヒトでは、毎年のように聞くと思いますし、周りの人や自分自身が熱中症になったと言う経験はあると思います。この、ヒトではおなじみの熱中症ですが、ワンちゃんにも起こりうる疾患です。よく起こる事象としては高温多湿下での長時間の曝露(放置や物に挟まって動けない)、熱放散能の低下、過度の運動などで起こります。また、条件が揃えば夏だけではなく、冬にも起こうるので要注意です。例えば、暖房が効いた部屋で放置、物と物の間に挟まって身動きが取れなくなった、シャンプー後のドライヤーの熱風で熱中症になってしまったという事例もあります。

熱中症になると、人間と同じく、高体温と脱水によって循環障害、それに伴い全身諸臓器の障害に繋がります。時間経過が長いと、その分だけ臓器へのダメージが進行してしまいます。ダメージを受けやすいのは腎臓、消化管粘膜等で、ひどい場合は中枢神経にもダメージを負ってしまい、発作を起こして来院される場合もあります。腎臓も傷害がすすんでしまえば命の危険がありますし、消化管粘膜が傷害を受けると、そこから腸内細菌が血管内に侵入し、全身性炎症反応症候群(S I R S)に発展してしまうケースもあるので、なかなか治療が難しくなってしまいます。治療は、体温下げるために冷却、輸液療法による循環の改善、抗生剤治療、抗血栓療法など、対症療法が中心になります。

とあるデータでは、熱中症が原因で"緊急受診"する犬の死亡率は50%程度にも及び、やはり急性腎不全や血栓形成、発作を起こしている、低血糖、病院受診の遅延(症状出てから1時間以上経っている)などが見られる症例が死亡する確率が高くなるようです。このように、一口に熱中症と言っても、死亡するケースも少なくない疾患です。

この時期は気温も上昇してしまうので、できるだけワンちゃんを涼しいところで居させてあげる、少し暑いところでしんどそうにしていたら早めの受診をお勧めするとともに、来院前から涼しいところで濡れたタオルで冷却、扇風機や冷房で冷たい風を送る、できるだけ水を多く飲ませるなどの対応をしてください。

R.I