南が丘動物通信

網膜変性症 20年07月10日

 網膜の視細胞が変性を起こすことで進行性に視力が低下し、最終的には網膜全体に変性が及ぶことで失明する遺伝性の網膜変性症が犬でみられます。これは遺伝性疾患のため純血種、特にミニチュアダックスフンド、プードルでは遭遇する機会が特に多く、ラブラドールレトリバー、アメリカンコッカースパニエル、ミニチュアシュナウザーなどでも認められます。

 初期では夜盲(夜や暗いところで見えなくなる)やおとなしくなるなどの症状が現れますが、ご家族は気づかないことが多く引越しや部屋の模様替えをして初めて視覚障害に気づくことも多々あります。数か月~数年かけて最終的に失明します。また瞳孔が広がる傾向(散瞳)にあるため、眼が光っているように感じられる方もおられます。

 診断は視覚の有無を判断する検査を行い、次に眼底検査をして網膜の様子を確認します。網膜はタペタム領域の反射亢進、網膜血管の減少と狭小化、進行すると視神経乳頭の委縮と陥凹が認められます。当院ではアイリスベットという器具を用いて赤色光と青色光を用いた比色対光反射を実施することで評価することも可能です。眼科専門病院ではさらに網膜の機能を調べるのに有用な網膜電位図により早期に診断できる検査もあります。

 残念ながら現在、網膜変性症を治療したり進行を遅らせることのできる治療法はありません。多くの症例がゆっくりと進行していくために、失明に伴う生活の質の低下はあまり生じないのが救いにはなりますが、冒頭でも述べたように引越しなどの環境の変化には留意する必要があります。さらに網膜変性が長期にわたると続発性の白内障を発症することがあります。視覚はすでにありませんが白内障は炎症を起こすなど問題となることもあるため、白内障の発生には経過を追う必要があります。

 該当犬種では特に要注意なため、見えにくいのかな?と感じられた場合はご相談ください。

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T.S.