南が丘動物通信

バベシア症 18年04月22日

4月に入り、大分暖かくなってきました。人間だけでなく、様々な生物にとって過ごしやすい季節になってきましたが、当院でもマダニに吸血されたワンちゃんがすでに来院されています。マダニから媒介される病気として昨今取りざたされるのが、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ですが、動物で有名なのが、Babesia gibsoniの感染によるバベシア症です。バベシア症は通常、マダニの吸血によって媒介されますが、まれに輸血や経胎盤感染、闘犬時の血液の接触によって感染することもあります。潜伏期間は、平均して2週間程度とされていますが、数カ月から数年にわたって診断がつかないこともあります。発症すると溶血性貧血、血小板減少症、脾腫を引き起こします。

症状としては、元気消失、食欲不振、発熱、粘膜蒼白、黄疸、濃色尿などがありますが、特異的な症状はありません。診断は、血液塗抹で虫体を確認するか、血液を用いた遺伝子検査によって診断されます。鑑別疾患として免疫介在性溶血性貧血が最も重要となります。治療は、抗ピロプラズマ薬や各種抗生剤、アトバコン等によって行います。適切な治療により、短期的には予後は良好ですが、Babesia gibsoni虫体は適切に治療しても体内からの完全駆虫は困難とされており、様々なストレスや免疫抑制剤の投与、脾臓摘出などにより再発が起こる可能性があります。よって、感染源であるマダニに吸血されないということが何より重要となります。マダニ予防には、スポットタイプと飲み薬のタイプがあり、最近は飲み薬のタイプの種類が充実しています。多くはチュアブルタイプで、投薬もさほど苦労しないように各種メーカーが工夫しています。詳しくは当院までご相談ください。万が一マダニが吸血しているのを見つけた際には、バベシア原虫が動物に感染するには、少なくとも2~3日間の寄生が必要とされているため、なるべく早く動物病院を受診されることをお勧めします。

T.H.