南が丘動物通信

水晶体偏位 16年10月09日

 水晶体は眼球の中のレンズの役割をしており、前房と硝子体の中間に毛様小体に支えられて存在しています。しかし何らかの原因でこの毛様小体が損傷してしまい、水晶体が前房あるいは硝子体に脱臼してしまう状態のことを水晶体偏位といいます。

 水晶体の後方偏位、つまり水晶体が後ろの硝子体の中に落ちている場合は、軽度のブドウ膜炎が起こることで結膜の充血を認めることがありますが、基本的に保存的治療によって経過観察をしていくことが多いのですが、逆の前方偏位、つまり水晶体が瞳孔を超えて前に出てきてしまうと問題になってきます。というのも前方偏位は緑内障を併発してしまうことにあります。ただし、緑内障から眼圧の上昇によって水晶体が前方偏位してしまうこともあるので診断には十分な注意が必要です。たとえば両目の眼圧が上昇しており、片方のみ偏位が起こっている場合は、原因は緑内障であると考えられます。逆に両目の偏位があって片方だけ緑内障になっている場合には原発性の水晶体偏位と考えていきます。また、瞳孔をしっかり開かせておき、水晶体を自然に戻しておき、そのあと再発しないかあるいは眼圧がちゃんと下がるかといった経過観察でも推察は可能です。

 水晶体の前方偏位がある場合は通常急性流や眼瞼痙攣が起き、充血がみられます。涙がいつもより多く、お目目が真っ赤っかになっている場合には水晶体の問題があるかもしれません。緑内障になってしまう前に早めに診察にいらしてくださいね。

S.A