南が丘動物通信

新しい分子標的薬・パラディア 16年09月11日

 国内初、犬用の分子標的薬としてパラディアという製品が発売されました。有効成分はトセラニブといいます。分子標的薬とはターゲットとなる腫瘍細胞を狙い撃ちして抑制効果を示すため、一般的な抗癌剤よりも副作用が出る可能性が低いものです。

 以前にもイマチニブという分子標的薬をワンちゃん猫ちゃん用いていましたが、このトセラニブはイマチニブに比べて標的になる分子が多く、マルチキナーゼ阻害薬(いくつものキナーゼを阻害するという意味)と呼ばれています。イマチニブ以上に抑制効果がみられ、また応用できる腫瘍も多いのではないかと言われており、現在は多くの腫瘍に対して使用されるようになってきています。代表的なものは肥満細胞腫、肛門嚢腺癌、甲状腺癌、鼻腔癌、転移性骨肉腫、頭頚部癌などが報告されています。その作用は特定の分子の働きを抑制することによる直接的な腫瘍増殖抑制効果と、腫瘍が増大するのに必要な血管の新生を抑制することによる間接的な抑制効果とがあり、様々な腫瘍に対して効果を示すのは後者の働きが大きいのではないかと言われています。また他の治療との併用によっても相乗効果があるのではないかと考えられています。

 しかしイマチニブよりは消化器障害(嘔吐や食欲不振)などが出やすく、投薬量の調節が必要になる事もあります。また高価であるということ、製品が不足しておりなかなか入手が難しいという面もありますが、最近では使用報告例も多くなってきており非常に期待できる薬と思っております。

近年はヒトと同様、動物にも腫瘍性疾患が多くなってきております。そのような病気を患ってしまった子たちの力に少しでもなれるよう、新しい薬の情報も仕入れていきたいと思っています。

T.S.