南が丘動物通信

ヘビ咬傷 16年03月13日

徐々に暖かい日がみられるようになり、当院のある三田市でも様々な動物の活動が見られるようになってきました。三田市は少し住宅街から離れると、のどかな田園風景が広がっている自然の多い地域です。そういった土地柄もあり、毎年何例かはヘビ咬傷が発生します。

ヘビ毒は、ヘビの種類のよって様々ですが、主に問題となる毒ヘビは、本州ではマムシやヤマカガシ、奄美諸島以南ではハブです。マムシとハブはクサリヘビ科マムシ亜科に属するヘビで、これらのヘビ毒には血液毒性、血管毒性、壊死毒性があります。大量の赤血球や血漿の漏出を起こし、低血圧や出血、局所的浮腫を引き起こします。ヘビ毒の酵素活性が生体に及ぼす影響は2~5日続くとされているため、この期間は病巣の急激な広がりが認められることがあります。

ヘビ毒の急性期にはショック状態になり、虚脱していることも少なくありません。播種性血管内凝固(DIC)や急性腎不全に陥ることもあります。その他ヘビ毒の種類によっては心筋抑制因子による不整脈の誘発、神経毒による中枢神経障害や呼吸不全なども起こり得ます。抗毒素血清は特定のヘビに対するものであるため、合っているものを使用すれば効果的ですが、非常に高価であり、多くの場合は咬まれたヘビの種類がはっきりしていないため、使用は困難です。そのため急性期の治療としては、ヘビ毒が体内で中和、代謝され排出されるまで、輸液や抗菌薬の投与に加え、病態に応じた集中的な治療が必要となります。こういった急性期を乗り越えることが出来れば、予後は大幅に改善することが期待されますが、その後に広範な皮膚の潰瘍病変が問題となってきます。レーザー治療などにより皮膚の壊死を食い止めるようにしますが、壊死が起こってしまった場合には、外科的な処置も必要となります。

ヘビ毒に対する治療は早期に開始し、また病態に合わせて適切な治療を施すことが重要です。一般的にヘビの活動性は春と夏に上がり、ヘビ咬傷もこの季節に多く発生します。この時期の散歩時には、藪の中や低木の街路樹など足元が不明瞭なところに立ち入らせないようにするなど、飼い主様が注意して頂くことも重要です。

T.H.