南が丘動物通信

臍ヘルニア・鼠径ヘルニア 15年11月15日

臍ヘルニアは最も一般的なヘルニアで、先天性異常です。臍ヘルニアの好発犬種はエアデールテリア、バセンジー、ペキニーズ、ポインター、ワイマラナーなどが挙げられます。胎生期に臍血管、卵黄管、尿膜管が通過していた臍輪が出生時に閉鎖しない事が原因ですが、その発生機序は不明な点が多いです。母体に大量のNSAIDsを服用させた、αフコシダーゼ活性の欠損による家族性の報告がされています。生後6か月までは自然治癒もあり得ます。

鼠径ヘルニアは、内股の鼠径輪から腹腔内の臓器や組織が突出することです。好発犬種はバセンジー、ペキニーズ、プードル、チワワ、コッカ-スパニエル、ダックスフントなど多岐にわたります。鼠径ヘルニアの特徴として先天性のものと後天性のものがあります。先天性は、精巣の下降と関連して発生するのでメスよりもオスで発生が多いです。会陰ヘルニアと併発して起こることもあります。後天性のものは中年齢の未避妊メスが多く、エストロゲンによる筋肉の菲薄化が関与しているのではないかと言われています。右よりも左側での発生が多いですが、トイ犬種やシャーペイは17%が両側に発生します。ヘルニア内容物として子宮が多いのが特徴です。

オスの鼠径ヘルニアには、ヘルニアが鞘膜腔に出てくる陰嚢ヘルニアもあります。通常片側性で起こり軟骨異栄養犬種やシャーペイで好発します。小腸が出てくることが多く痛みを伴います。陰嚢ヘルニアが存在する場合、精巣腫瘍の発生率が上がるので同時に去勢手術を行うことをお勧めします。

臍ヘルニア、鼠径ヘルニアとも、治療法は外科的整復です。ヘルニア内容物を戻して筋肉、靭帯を縫合して隙間を閉じます。一般的に予後は良好です。

ヘルニアは大網や脂肪に加え、場所によっては小腸、子宮、膀胱、脾臓などの臓器が腹腔外に突出してしまいます。これらの臓器が絞扼されると命にかかわることもあります。新しい子を家に迎えたら、よく体を触って観察してあげてください

M.M.