南が丘動物通信

不整脈原性右室心筋症 15年04月05日

かつて「ボクサー心筋症」と呼ばれていたこの疾患は、臨床所見や発生原因、病理組織像がヒトの不整脈原性右室心筋症に類似することが分かったため、現在ではこの名称で呼ばれています。近年、ボクサーの不整脈原性右室心筋症の病態に深く関連しているストリアチンの遺伝子上に8塩基対の欠失が認められることが明らかになり、常染色体優性遺伝の疾患であることが分かっています。この疾患の臨床所見は、ときおり心室性期外収縮が認められるが無症状であるものから心室頻脈性不整脈により失神、虚脱、運動不耐性などが起こり、さらにうっ血性心不全、突然死などが認められるものまで様々です。診断は、胸部X線検査や心電図検査、心臓超音波検査などの心臓の検査に加え、他の疾患を除外するための血液検査や腹腔内腫瘤が心室性不整脈の原因となる場合があるため腹部画像検査なども行います。中でも重要なのが不整脈原性右室心筋症が心室不整脈を特徴とする疾患であるため、心電図検査は必要不可欠となります。院内での短時間の心電図検査では、間欠的に生じる心室不整脈を検出できない場合があるため、正常であっても不整脈原性右室心筋症を除外できるわけではありません。よって24時間型心電図検査(ホルター心電図検査)が有用であり、心室不整脈の頻度を調べることによって無症状の症例の治療開始の目安としたり、治療効果の判定に用いることも可能です。治療は症状が発現している場合に各種の抗不整脈薬を用いたり、うっ血性心不全兆候が見られる場合には強心薬や血管拡張薬などを用いたりします。最近の研究では、ω3脂肪酸を補うことで心室性期外収縮が減少したとの報告もあります。不整脈原性右室心筋症は上述の通り遺伝性疾患であり、根治が困難な疾患であるため、疾患の遺伝を起こさないよう遺伝子検査を行って繁殖のコントロールを行うことが望まれます。 T.H.