南が丘動物通信

イヌのキシリトール中毒 14年11月30日

 キシリトールは、砂糖不使用の飴やガム、焼き菓子、デザート、飲料、シリアル、歯磨き粉などに含有されている甘味料です。ヒトはキシリトールを摂取しても安全ですが、イヌでは命に関わるような中毒が起こる可能性があることが知られています。イヌでは0.1g/kg以上摂取すると低血糖症を起こす危険があり、0.5g/kg以上摂取すると急性肝不全を起こすことがあります。こういった症状が発現するか否かは、摂取した用量依存ではなく、個体の体質によって決まると考えられています。
 低血糖症は、ヒトにおいてはキシリトール投与後のインスリン血中濃度の上昇の程度が、グルコース投与後に比べてごく軽度であるのに対し、イヌにおいてはキシリトール投与後のインスリン血中濃度の上昇が、等量のグルコースを投与したときと比べて2.5~7.5倍も上昇するために引き起こされます。
 一般的に、イヌではキシリトール摂取後に嘔吐が認められます。低血糖症は、摂取後30~60分以内に認められることが多いですが、遅延する場合もあり、摂取後12~48時間以内に認められることもあります。低血糖症の症状は、精神状態の変調、倦怠感、虚弱、運動失調、視覚の変調、発作などです。一方、急性肝不全は、摂取後9~72時間後に発症したという報告があるため摂取してしまった場合は72時間後までは注意が必要であると考えられます。
 治療は、低血糖症や肝不全が起こっておらず、摂取後時間がさほど経っていなければ、催吐処置を行います。低血糖症や肝毒性が現れている場合には、入院しての集中的な治療が必要となります。単純に低血糖症が起こっているのみの場合は予後は良好ですが、肝毒性が現れていたり肝不全が発生した場合には予後は要注意~不良となります。
 キシリトールは、現在では非常に身近な食品となりました。その分飴やガムの誤食も多くなってきているように思われます。くれぐれも誤食されないよう管理には十分に気を付けるようお願い致します。