南が丘動物通信

猫の扁平上皮癌 14年08月10日

扁平上皮癌は猫の皮膚に発生する一般的な腫瘍です。特に外に出る猫では紫外線が刺激となり、耳、顔面、眼瞼、鼻梁などに強い炎症がおこりその部分が癌化することがあります。これは毛の色の薄い猫、あるいは白猫によく見られます。また外耳炎が慢性化したような場合にも分泌された耳垢に刺激物質が含まれており、それが癌化を促進させるとの報告もあります。このような誘因により発生するため、扁平上皮癌の多くは顔面の組織に発生する傾向があります。
症状は、一般的な腫瘍病変と同様にしこりを形成するのみではなく、炎症性疾患が原因である場合は強いかゆみなどの症状をおこし、皮膚のびらん・潰瘍病変を形成し周囲の組織へ浸潤しその機能を障害します。末期にはその組織の機能障害を強く起こすとともに、腫瘍性の悪液質(衰弱状態)に陥ります。
診断は一般の皮膚腫瘍と同様に、針吸引生検に代表される病理組織検査により診断することが可能です。
治療は外科的切除が第一選択で、耳介、耳道、眼球、下顎に発生した腫瘍は完全に切除できれば良好な予後が期待できます。しかし顔面の器官に腫瘍が発生した場合、切除すると生活レベルに支障が出る重要な器官である場合が多いので切除不能な場合も多々あり、早い例では1,2カ月で腫瘍の侵襲が進んでしまうなど予後は悪いです。また治療としては確立していないのですが、切除不能な症例に放射線療法や抗癌剤あるいはインターフェロンによる治療などが効果があったとされる報告もあります。
猫では、紫外線の刺激、外耳炎などからの発生例が報告されていますので、長時間外に出さない、外耳炎の治療をきちんと行うなどのことは扁平上皮癌の発生をおさえるのに有効だと思われます。
H.B.