南が丘動物通信

水頭症 14年06月01日

 水頭症は、脳脊髄液の産生、循環および吸収のいずれかに異常が生じた場合、脳脊髄液が頭蓋内に貯留して頭蓋内圧が亢進することにより、脳室が拡張して脳実質が圧迫されて神経症状が現れる神経疾患です。
 先天性水頭症の好発犬種としては、トイ犬種(チワワ、マルチーズ、トイプードル、ヨークシャテリアなど)や短頭種(パグ、ペキニーズ、ボストンテリアなど)などがあげられます。症状は運動失調(起立困難、旋回運動、不全麻痺歩行など)、痴呆症状、性格変化、発作、視力障害などであり、慢性進行性の場合が多いですが、時に急性に出たり散発的に発生する事もあります。一方で脳室拡張が認められる場合でも臨床症状を伴わないことがしばしば認められ、症状の現れ方には個体差が大きいです。
 後天性水頭症は主に頭蓋内に生じる何らかの原因(脳腫瘍、髄膜脳炎、脈絡叢の腫瘍、感染、出血など)により髄液循環に問題が生ずることにより発生します。症状は原因によって様々です。
診断は、多くは一般生化学検査では異常が認められず、超音波検査やCT、MRIなどの画像検査にて確定診断を行います。また、後天性水頭症の場合、脳脊髄液検査が診断の助けとなることがあります。
 先天性水頭症の治療の第一の目的は、頭蓋内圧を低下させることであり、内科的治療では髄液産生を低下させるためにコルチコステロイドや炭酸脱水素酵素阻害薬が用いられ、また髄液循環量を低下させるために利尿薬が用いられます。神経症状として発作が認められる場合には抗痙攣薬も用いられます。内科的治療に反応が乏しい重度水頭症患者には、外科的治療が考慮されます。
後天性水頭症の場合は、基本的に原疾患の治療を優先します。