南が丘動物通信

がん患者における栄養 14年03月23日

 がんの動物ではがんの発育による全身の衰弱から体重減少を呈し、また一般状態の悪化から食欲不振となることでさらに栄養不良となることで悪循環となり、動物はますます体重減少してしまいます。この状態をがん性悪液質といいます。このことで免疫機能、心肺機能、消化機能などさまざまな症状を引き起こします。
 炭水化物は腫瘍の最も好む栄養素であり、動物にとっては高インスリン状態であるためうまく炭水化物を利用することができません。また炭水化物を腫瘍が嫌気的に分解することで乳酸が発生し、乳酸を還元するために動物はさらにエネルギーを奪ってしまいます。逆に腫瘍は脂肪をうまく利用することができませんが、動物はがんであっても脂肪を酸化することでエネルギーとして利用することができます。そのためがん患者では、低炭水化物、高脂肪、良質な高タンパクの食事が有用となります。
 短期間食べないだけで悪液質となることから、食欲増進剤やチューブでの経腸栄養など早期の栄養管理が必要となります。粘膜の健康を保つグルタミン、免疫機能に関与するアルギニン、抗腫瘍効果のあるEPAやDHAなどを添加することでさらに効果的となります。ただでさえがんと闘っている動物ですから、不快な症状を取り除くことで普通に食べたり飲んだり、生活の質を維持したいものです。そしてそれが動物の命をつなぐことにもなります。
T.S.