南が丘動物通信

落葉状天疱瘡 12年07月17日

 落葉状天疱瘡は、イヌとネコの表皮と毛包が傷害されて水疱や膿疱、痂皮、びらん等が形成される疾患です。ヒトと同様に、表皮角化細胞間のデスモゾーム構成タンパク質(デスモグレイン1)を標的抗原とした自己免疫性疾患で、細胞間の接着障害が起こることにより上記のような症状につながると考えられています。また、一部の薬物(セファレキシン、サルファ剤など)に誘発されて類似の症状が発生することも報告されています(薬物関連性落葉状天疱瘡)。
痒みの程度は様々で、細菌や真菌による二次感染がない場合は、あまり強くないことも多いです。好発部位は、鼻、眼周囲、耳介、足底(肉球)、四肢などで両側対称性に認められることが一般的ですが、体幹を中心にびまん性に発症することもあります。あらゆる年齢、犬種に発症しますが、秋田犬、チャウ・チャウ、ドーベルマンなどでは遺伝的素因が認められています。
 診断は、発症部位、臨床症状、スクレーピング検査、スタンプ検査、細菌培養検査、試験的抗生物質療法、抗核抗体検査等から予測し、病理組織学的検査とあわせて総合的に評価します。これらの評価からも確定診断が難しい場合は、免疫組織学的検査において自己抗体の検出が必要になることもあります。
 治療は、二次的な感染を予防しつつ、グルココルチコイドや免疫抑制薬などによる全身的な免疫抑制療法が行われます。また、紫外線がこの疾患の悪化因子であると考えられているため、紫外線を極力避けるということも重要となります。
 落葉状天疱瘡は、自己の異常な免疫が関与する疾患であるため、治療は長期化し、完治できない場合も多いです。そのため、薬の量を適切に調整するためにも定期的な診察が必要となり、飼い主様と獣医師とのコミュニケーションが非常に重要となります。