南が丘動物通信

吐くという症状 11年09月06日

「吐く」と表現される症状は、正確には吐出と嘔吐に分けられます。おおまかに言うと吐出は食道の内容物が口から出てくること、嘔吐は胃の内容物が口から出てくることです。「吐いている」という症状が吐出であるか嘔吐であるかによって原因が全く違うため、行う検査が異なってきます。したがって吐出であるか嘔吐であるかを判断することは非常に重要です。
吐出は一般的に食後それほど時間が経っていない時に起こり、出てくるものは未消化物であるというのが特徴であると言われています。しかし例外はあり、食後すぐでも消化されている食べ物なら嘔吐により胃から出てきたものですし、吐いた物が未消化物であったとしても、消化を受ける前に胃から出てきた場合や胃の消化機能が異常である場合が考えられます。吐出と嘔吐でより信頼できる判断基準は吐くときの様子です。吐出では前兆がなく突然食べ物を吐き出し、努力なしに受動的に吐きます。
一方嘔吐では食後時間が経ってから、消化されたものが吐き出されます。しかし前に挙げたような例外があるため注意が必要です。嘔吐には前兆があり、そわそわする、立ち上がってかまえる、よだれが出るといった様子が見られます。また、吐くときは腹部が大きく収縮し、能動的に物を吐き出します。
以下に見分け方のポイントをまとめましたので参考にしてください。

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食道に問題があるときに起こる吐出の原因には食道炎、食道の物理的な閉塞(異物、狭窄、腫瘍、血管輪、食道周囲の腫瘍による外側からの圧迫)、巨大食道症などが挙げられます。嘔吐の原因はたいへん多く、様々な病気を疑う必要があります。想像しやすいのは消化器疾患ですが、嘔吐の中枢は脳にあるため脳の炎症や腫瘍、前庭の異常から起こっていることも考えられます。さらに肝臓や腎臓の病気によって血液中の有害物質が増えて嘔吐が起きている場合もあります。
以上のように吐出と嘔吐では考えられる病気が異なるので、わんちゃんや猫ちゃんが「吐いている」ときは、その様子をよく観察してみてください。