南が丘動物通信

子宮蓄膿症 11年06月07日

 子宮蓄膿症は高齢の未避妊雌犬で多発する病気で、子宮内に膿が貯留し緊急性の高い疾患です。猫では一般的ではありません。
 そもそも犬の生理は特殊なもので、発情、排卵のあと妊娠していなくても2ヶ月程卵巣には黄体が形成され続け、黄体ホルモンが産生されます。つまり偽妊娠状態が約2ヶ月続きます。黄体ホルモンは子宮内膜腺の増殖と分泌を刺激し、これが長期間、高濃度持続することで嚢胞状子宮内膜過形成になるといわれています。この状態では子宮内に液体が貯留し、細菌が増殖する温床となってしまいます。10歳齢以上では未避妊雌の4分の1程度が子宮蓄膿症になるリスクを持っているといわれています。
 膣からの排膿、発熱、食欲不振、元気消失、多飲多尿、脱水、嘔吐などが見られます。膣からの排膿がない閉鎖型だとより重度になります。卵管から膿が腹腔内へと漏れ、腹膜炎を発症することもあります。また合併症として腎機能不全、血液凝固異常(DIC)、低血糖、全身性炎症反応症候群などを伴うこともあります。
 診断は問診や身体検査、血液検査での白血球数の増加や貧血、また画像診断、特に超音波検査で液体に充たされた子宮を確認することで診断に役立ちます。
 治療の基本は一般状態の改善と、卵巣子宮摘出です。子宮蓄膿症の子宮は組織が脆弱であるため、手術は特に注意が必要となります。また近年では内科的治療法もいろいろと研究されているようです。黄体を退行させるプロスタグランジン(PG)やPG受容体拮抗薬などがあります。前者は嘔吐、低体温、発情回帰が早く再発してしまうことがあるなど副作用もあり、注意が必要です。後者は子宮を黄体期から脱して子宮を弛緩させ排膿させるもので、前者よりは副作用が少ないものです。しかしどちらもまだ一般的ではなく、そしてもちろん重症でより緊急性の高い場合には外科的治療が最優先となるのは言うまでもありません。
 犬では発情後にこの病気が多く発見されますので、発情後1~2ヶ月はよく様子を気をつけて見てあげて下さい。