南が丘動物通信

猫のジアルジア症 11年02月22日

Giardia duodenalis(別名G.lamblia、G.intestinalis)は猫の消化管寄生虫として一般的な原虫です。
日本国内の猫の感染率は、調査の母集団や地域、検査方法によっても異なりますが、おおむね1~10%と推測されます。感染個体から便とともに排出された病原体(シスト)の経口、あるいは接触感染により伝播し、感染した猫のほとんどは症状を示すことはありませんが、急性小腸性下痢やそれに伴う体重減少が認められることがあります。

診断方法には、直接塗抹法や遠心分離法による糞便検査での病原体の検出がありますが、検出されないからといってジアルジア症を否定することはできず、また検出されたからといって必ずしも顕性寄生(つまり確認されたシストが症状の直接的な原因となっている)と確定することができません。近年では、ELISA検査キットなど新しい検査方法が利用されつつあり、臨床兆候やその他の所見から総合的に解釈する必要があります。

治療方法はいくつか報告されていますが、一貫して効果を発揮する治療法は確立されておらず、また無症状の猫に治療が必要かどうかはいまだ議論されています。症状が認められる猫には、フェンベンダゾールとメトロニダゾールを併用した薬物療法が安全かつ有効な選択肢として推奨されています。また病原体(シスト)を被毛から除去して再感染を防ぐため、猫用トイレの交換や猫を入浴させるなど飼育環境のコントロールも重要となります。