南が丘動物通信

気管虚脱 10年12月21日

 犬の気管は輪状の気管軟骨とそれらを連結する靭帯でできており、軟骨の背方部分は開放しています。気管虚脱とは気管軟骨が平坦化して気管内腔が狭窄することで、これにより咳や呼吸困難を引き起こします。
 一般的には中年齢以上のトイ犬種やミニチュア犬種に多く、まれに大型犬や若齢犬で発生することもあります。最初の症状としては乾いた咳をするようになり、咳は興奮時や運動時、また首輪などで首を圧迫するときに悪化します。そのような状態がしばらく続くと、やがて呼吸困難を呈するようになります。また心臓疾患、肥満、副腎皮質機能亢進症などは増悪因子となります。
 発生する部位によって頚部気管虚脱、胸部気管虚脱に分類され、レントゲン検査によって診断が可能となります。また気管を圧迫されると咳が誘発されることも診断の一助となります。ほとんどの症例では内科治療で改善が認められ、気管支拡張薬や鎮咳薬を内服します。首輪からハーネスへ変更する、体重を減らすことも重要です。
 気管虚脱に対する外科的治療は現在では一般的に行われているわけではありませんが、各種ステントやプロテーゼなどが開発されており、近い将来に外科的治療が選択肢として挙げられるようになるかもしれません。気管内ステントとは気管内腔へ支持体を装着して、気管の形態を維持させる方法です。装着が容易ですが、気道刺激が強く発咳で出てしまうことがあります。気管外プロテーゼは気管の外側に支持体を装着することで形態を維持する方法です。パラレルループ形など様々なプロテーゼが考案されています。良好で長期的な手術成績が報告されていますが、外科的侵襲が大きく、一時的に症状が悪化することがあります。手術適応の時期や術式など、外科的治療はまだまだ議論するべきことが多いようです。
 最近咳をしている、呼吸が苦しそう等ありましたらご相談ください。