南が丘動物通信

犬の先天性水頭症 10年11月23日

 水頭症とは、脳脊髄液の産生、循環、吸収のバランスが崩れ、脳室または、くも膜下腔に過剰に脳脊髄液が貯留した状態と定義されています。先天性と、後天性とに分類され、後天性には、外傷、出血、腫瘍などがあります。脳脊髄液は、約70%は脳内で作られ、残りは脊髄くも膜下腔で産生されます。またその吸収は、大部分は、脳くも膜下腔へと上行し、静脈洞へと流れ込みます。その他には、リンパ管への吸収があります。水頭症の原因で、脳脊髄液の産生過剰は、あまり一般的ではありませんが、脳脊髄液を産生する脈絡叢の腫瘍による水頭症が知られています。閉塞は、脳室系経路の生理的狭窄部に生じやすく、中脳水道という部分での閉塞による水頭症が、犬やヒトで最も頻度が高いです。閉塞原因があきらかなものを、二次性、閉塞原因が不明のものを一次性と呼びます。イヌの先天的水頭症は、今までは、中脳水道の閉塞が、水頭症原因の多くを占めると考えられてきました。しかし、最近では、画像技術の発達によって、イヌでの水頭症の原因は、中脳水道の閉塞ではなく、吸収障害が、もっとも多い原因ではないかと推測されてきています。ヒトでは周産期脳室内の出血やくも膜炎により、くも膜絨毛に目詰まりを生じ、脳脊髄液の吸収障害を起こす例が比較的多く報告されています。しかしながら、イヌでは、現在では、未だ、このようなことは報告はほとんどありません。遺伝の可能性はありますが、先天性の水頭症は、原因が未だ明らかになってはいません。発生段階で、ウイルス感染、催奇形物質の暴露、栄養障害も示唆されています。猫の水頭症は犬の水頭症より遭遇する機会は少なく、中枢神経性FIP感染による二次性水頭症の報告が最も多いです。
 イヌの先天性水頭症の発生は、トイ種や小型の短頭種に多いです。特に、チワワ、ヨークシャテリア、トイプードル、パグ、ペキニーズ、マルチーズ、ポメラニアン、イングリッシュブルドック、キャバリアといった犬種に発生が多いという報告があります。
先天性水頭症は生後半年までに水頭症にともなった神経症状が出る事が多いですが、成犬になってから症状がでる場合もあります。
 診断は、CTやMRIと言った画像診断になります。また超音波での診断が可能な場合があります。
 治療は外科的なものであるなら、シャント形成術、内科的なものであれば、内服を飲むといったものがあります。