南が丘動物通信

犬の動脈管開存症 10年07月06日

動物は母親のお腹の中にいるとき、胎児循環という胎児特有の血液の循環経路を有しています。動脈管とは胎児循環のひとつで、肺動脈から大動脈へ血液が流れる血管です。胎児は自分の肺で呼吸せず、肺に血液を送る必要がないために動脈管があります。出生後すぐに動脈管は閉鎖して痕跡だけが残るのが正常ですが、動脈管が出生後も開いているのが動脈管開存症です。犬では最も多く認められる先天性心疾患で、遺伝性の病気です。
動脈管開存症では、血圧の影響で大動脈から肺動脈へと血液が流れ、大動脈の血液は少なく、肺動脈の血液は多くなります。肺動脈へ血液が多くなると、肺を通過して心臓の左心系へ戻ってくる血液の量が多くなり、左心系の負担が大きくなります。やがてうっ血性左心不全となり、肺水腫などの重大な徴候を示すようになります。動脈管が大きく開いている動物では、血液の流れが肺動脈から大動脈へと逆になり、低酸素血症、チアノーゼなど、より重度の症状となります。
動脈管開存症では連続性雑音や脈圧の上昇という特徴的な身体所見が得られ、心臓エコー検査が診断にとても有用です。心不全に至るまではなかなか症状を示さないため、入念に身体検査を行う必要があります。発見した場合は積極的な治療が必要で、外科的に動脈管を縛ることで根治的な治療も可能です。
この病気の症例のほとんどは子犬です。病気のことも含め、子犬を飼われた飼い主さんは分からないことが多いと思います。疑問等ありましたら当院へご相談ください