南が丘動物通信

猫の肥大型心筋症 09年12月15日

心筋症とは心筋自体に何らかの異常が生じ、全身が循環不全に陥る状態を指します。肥大型、拡張型、拘束型と呼ばれるタイプがあり、ネコで最も多いのが肥大型心筋症です。メインクーンなど一部の品種で遺伝性が強く疑われていますが、まだ結論に至っていません。
肥大型心筋症は、心筋が異常に厚くなるために左心室が著しく狭くなります。そのため心室に十分な血液を入れることができず、心臓が収縮しても全身に十分な血液を送り出すことができなくなり全身的な循環不全が起こります。また、心室に入りきらない血液は左心房、肺静脈、更に肺の毛細血管に停滞し、その結果左心房は拡張、肺の毛細血管からは血液の液体成分が浸み出し、肺水腫や胸水貯留を引き起こします。更に、心筋の肥大による僧帽弁周囲の変形によって弁が完全に閉じず血液が逆流する僧帽弁閉鎖不全を併発することもあります。僧帽弁閉鎖不全はうっ血をさらに悪化させます。また、動脈血栓塞栓症も重大な合併症です。血栓は左心房内に発生することが多く、血液の流れに乗って血管が細くなる部位(多くは大動脈から両後肢に分かれる部位)に詰まり、血液を遮断します。
症状は、急に元気がなくなる、突然口をあけて呼吸する、突然後肢に痛みを訴え麻痺がおこる、などがあります。
治療は、薬物による内科的療法および食事療法により行われます。状態によっては酸素療法、血栓摘出術なども行われます。しかし、こういった治療が成功するかは病気の進行程度によって大きく左右されます。早期に発見することができれば、投薬によって心筋が肥厚するのを遅らせたり、血栓を作りにくくすることができます。一方でうっ血が進行し、呼吸困難が重度であればその治療は大変難しいものになります。
本症は、症状が出始める頃にはかなり病気が進行した状態であることが多いため、早期発見が非常に重要になってきます。血液検査や聴診では多くの場合診断が困難であり、レントゲン検査や心エコー検査によって診断が可能です。健康診断の一環としてこれらの検査もとりれてみてはいかがでしょうか。