南が丘動物通信

会陰ヘルニア 09年10月12日

会陰ヘルニアは骨盤隔膜が何らかの原因で破綻し、直腸や膀胱などの腹腔及び骨盤腔内の臓器や組織が皮下に脱出した状態を指します。多くが去勢手術を行っていない雄犬に発生することから性ホルモンのバランスの変化や前立腺疾患との関連が示唆されていますが、詳しい発生機序については未だ議論中です。
症状は脱出する臓器によりことなり、直腸が変位した場合では、排便困難、便秘、しぶり、便失禁が見られ、膀胱の場合には排尿障害、尿失禁などが認められます。膀胱の脱出による排尿障害から来る腎後性尿毒症や腸の絞扼など緊急な対応が必要になってしまうこともあります。
治療には内科的治療と外科的治療がありますが、内科的治療は排便排尿困難を改善するのが目的で根治的ではなくまた長期的な管理は困難なことがほとんどです。そのため、治療法の第一選択は外科的治療となります。外科的治療では様々な手術法が開発され、ヘルニアのタイプや重症度により術式が決定され、場合によっては開腹による腹腔内臓器固定術が併用されます。それぞれの術式における治療成績は様々で再発率は報告によりばらつきがあります。症例の重症度にもよりますが少数の症例では再発が避けられないこともあります。
会陰ヘルニアは非常に厄介な疾患であり、病態が進行すると、重篤な状態を招く可能性があることからも、早期の治療が望まれます。排便排尿困難などの症状が認められたら早めに診察されることをお勧めします。また、予防として若い時期で去勢手術をすることも有効でしょう。