南が丘動物通信

狂犬病 08年04月15日

狂犬病予防接種の時期です。

狂犬病はその名前から『犬の病気』と誤解されがちですが、人を含め哺乳類に分類されるほとんど全ての動物に感染する人獣共通感染症です。発病後の死亡率はほぼ100%で治療法はありません。日本では、2006年に海外滞在中、犬に噛まれ帰国後、狂犬病を発症し死亡した事例が2件続いて起こりました。しかし、日本国内で感染した例は狂犬病予防法(狂犬病の発生を予防し、蔓延を防ぎ、撲滅することにより公衆衛生の向上及び福祉の増進を目的として制定された法律:1950年)施行による飼い犬の登録と予防接種の義務化などにより1957年以降50年以上発生例はありません。海外では、アメリカや多くの欧米諸国などの先進国をはじめ、世界各国で発生しており、年間約55,000人もの人が亡くなっています。日本は数少ない狂犬病清浄国なのです。

WHO(世界保健機構)のガイドラインによれば狂犬病の流行を防ぐために必要とされる予防接種率は70%とされています。ところが、犬による咬傷事故が毎年6,000件程度報告されている一方、犬への狂犬病ワクチンの接種率は近年低下しており、2004年の厚生労働省の調査によると予防注射実施率はガイドラインの数字を大きく下回っています。つまり、狂犬病清浄国である我が国でも、いつ狂犬病が発生あるいは流行してもおかしくないということを意味し非常に危機的な状況にあると言えます。この現状を打開するためには、日本人一人一人が狂犬病の恐ろしさ、現在の日本の状況を認識することから始まると思います。

狂犬病ワクチンをイヌに接種することは、あなたの愛犬を狂犬病から守るばかりでなく、社会全体を狂犬病の恐怖から守ることにもつながります。

しかし、絶対に狂犬病ワクチンと同時に、混合ワクチンを接種することはさけなければなりません。ワクチンの使用説明書にも他のワクチンとの同時投与を避けること、他のワクチン接種まで規定の間隔を空けることが記載されています。面倒かもしれませんが、できるだけ副作用をださずに安全で、免疫の獲得できる予防接種を行うためには必要な配慮です。

今年も狂犬病予防接種を受けましょう