南が丘動物通信

柴犬の慢性腸症と胃腸リンパ腫 22年07月25日

 慢性腸症とは3週間以上持続する慢性下痢の原因の約7割を占めている病気です。検査や治療反応から食事反応性腸症、抗菌薬反応性腸症、免疫抑制薬反応性腸症などに分類され、それらに分類されない治療抵抗性腸症もあります。日本で人気の柴犬はこの慢性腸症の発生が多く、慢性下痢と食欲不振、削痩や衰弱が顕著でどんどん弱っていってしまいます。また慢性腸症の中には、胃腸管リンパ腫が隠れていることもありその診断がとても重要になりますが、柴犬はどちらも発生率が高いため特に注意が必要です。

 慢性腸症が疑われた場合は先述したように、まずは食事療法や抗菌薬、ステロイドなどで診断、治療していきます。どれも反応が乏しい場合は画像診断や内視鏡検査に進みますが、エコーの検査では腸壁や腸間膜リンパ節に異常を呈する場合もありますが、何も異常がないことも多々あります。エコー検査で何も異常がなくても、次は内視鏡検査で腸の生検を行い病理診断を行います。この段階ですでに体重も減少し一般状態が悪い子が多いのですが、それでも麻酔下での内視鏡検査は重要です。

 特に柴犬の場合は慢性腸症も胃腸管リンパ腫も厄介なのですが、慢性腸症からリンパ腫へと変化していくのではないかと近年言われてます。慢性腸症の治療経過中に、反応が悪くなり状態が悪化した場合はリンパ腫へ移行した可能性を考慮せねばなりません。柴犬は海外では少なくあまり研究論文が今までなかったのですが、日本を中心とした報告が近年多くなってきていますので、これからの研究報告をチェックしていきたいと思います。

T.S.

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