南が丘動物通信

犬の脳炎 22年05月25日

 若い犬がてんかん発作、ふらつきなどの症状で来院すると、その原因として脳炎が潜んでいることがときどきあります。犬の脳炎は感染性(ウイルス性、細菌性、寄生虫性など)と非感染性に区別され、感染性はワクチン接種が広まっているため少なくなっています。非感染性脳炎は自己免疫性疾患であり、遺伝的素因が多いとされています。中枢神経の自己免疫性疾患は特発性脳炎として分類され、さらに壊死性髄膜脳炎(いわゆるパグ脳炎)、壊死性白質脳炎、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎などに細分類されます。若齢~中年齢の小型犬に多く、チワワ、マルチーズ、ヨークシャーテリア、パグなど日本で人気の子に多くみられます。特に若い子では特発性てんかんとの鑑別が重要なため、診断は症状に基づいてMRI検査を行います。

 自己免疫性疾患のため、治療は免疫抑制治療になります。ステロイドのみではコントロールが難しいことが多く、免疫抑制剤や、免疫抑制効果を持つ抗がん剤を併用することで脳炎の管理をしていきます。症状が抑えられても、その後も継続的な治療が必要なためその子に合った治療法を探していく必要があります。いくつかの治療法が提案されてはいますが、治療の反応に乏しく亡くなってしまう子もいるため注意が必要な病気です。

 症例によっては急速に進行するため早期に診断・治療に入る必要があり、迅速な判断が求められる疾病でもあります。近年ではMRI撮影ができるようになったため診断頻度が増えていますが、今後もしっかりと診断・治療していきたいと思っています。

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T.S.