南が丘動物通信

誤嚥性肺炎ってご存知ですか? 20年01月20日

今回は「誤嚥性肺炎」に関するお話です。

ワンちゃん、ネコさんを飼っているご家庭では6ヶ月齢を過ぎると不妊・去勢手術をしましょう!と勧められると思います。手術の事前の注意として『当日はご飯を抜いて来てくださいね』と言われると思いますが、実は...誤嚥性肺炎を防ぐためでもあるんです。

◎誤嚥性肺炎:吸引性肺炎とも言われ、唾液、食物、胃液などを口腔内常在菌と共に気管支内に吸引して起こる肺炎

...じゃあ、手術と何の関係があるの?ということになりますよね。実は手術そのものというより、麻酔に関連しているんです。動物の場合多くの手術は全身麻酔で行われますが、手術が終わり麻酔の覚め際に嘔吐する場合が多く、吐いた物を誤嚥(※1)してしまうからなんですね。※1:飲食物や唾液を、誤って食道ではなく気道に飲み込むこと。

では実際、誤嚥性肺炎になるとどうなるのでしょうか。

①胃酸の吸引により上皮細胞が損傷し、細菌が侵入しやすくなる。※二次感染を生じやすくなる

②炎症や感染の結果、粘液産生量が増加し、気道閉塞となり呼吸しづらくなる

③損傷が重度の場合には、肺胞毛細血管の透過性が増し、非心臓性肺水腫となり急性促迫症候群となる

④重症度は吸引量、pH、細菌、微粒子の容積や大きさなどに影響を受ける

⑤重症の場合には治療の甲斐なく亡くなるケースもめずらしくない

手術当日にご飯を抜き忘れただけで手術が延期になった...なんて経験をされた飼い主さんもいらっしゃると思いますが、それは「誤嚥性肺炎」を防ぐために一番簡単で効果のある方法が『胃の中を空っぽにする』ことだからなんですね。

ただ、手術時の麻酔以外にも、ご飯が逆流する疾患(巨大食道症、食道憩室など)では誤嚥性肺炎のリスクがあります。フードを少量ずつ何回にも分けて与える、食事の形態を考える(ご飯後すぐに寝かせないなど)といった工夫も必要です。嘔吐が認められる場合、嘔吐の最中に大きな声をあげることで驚いて誤嚥してしまうケースもあるので注意しましょう。

K.G

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