南が丘動物通信

爬虫類・両生類を代謝性骨疾患にしないための栄養管理 19年12月10日

爬虫類や両生類を飼育する人が近年増えつつある。爬虫類や両生類における不調はさまざまあるが、給餌における栄養バランスが悪くて病気にかかるケースは少なくない。

犬猫の場合は、研究が進んでおり、完全栄養食のフードが市販されていたり、年齢別に必要となる栄養素がバランスよく配合されていたりする。しかし、爬虫類や両生類においては栄養学的な研究はほとんど行われていない。飼育されている個体に与えるエサは、通常、彼らが自然の中で食べているものとは異なっているのだ。複雑な食物連鎖を経た栄養満点のエサを与えられればいいが、それは至難のワザである。通常与えるエサは、種類別の人工フードの他、コオロギやワーム、デュビアやマウス等、飼育者が手に入れやすいエサを主体に与えることになる。

知っておきたいのはこれらの市販のフードだけでは5大栄養素のうちビタミンとミネラルが不足しやすいということである。これらが長期に不足した場合には、代謝性骨疾患にかかるリスクが高くなる。

代謝性骨疾患には、くる病、栄養性二次性上皮小体機能亢進症、骨軟化症などがあり、イグアナ、トカゲ、ヘビ、ヤモリ、カメ、カエル等あらゆる種類で発症が見られる病気である。

症状としては、下顎や四肢の変形、病的骨折、身体の麻痺や痙攣、元気消失や食欲不振にもつながる。 足やお腹を引きずって歩き方がおかしかったり、上顎と下顎のかみ合わせが悪く、下顎が腫れている、成長時期に大きくならないといった症状が出てきたら、代謝性骨疾患の可能性が高い

予防には適切な食事内容を考えることが第一である。おもにカルシウムやビタミンDといったサプリメントの添加が大事になる。このほか、有効な紫外線の照射や適切な飼育温度を保つこと、十分に運動できるスペースを確保することも大切な要素になる。

カルシウムは、丈夫な骨や甲羅の形成に必要不可欠なミネラル分であるが、爬虫類・両生類飼育において不足しがちなミネラル分である。

カルシウムの吸収にはビタミンDの作用が必要になる。ビタミンDは別名「サンシャインビタミン」とも呼ばれ、食物から摂る以外に、日光を浴びることで、体内で合成できる。食餌や日光(紫外線)から得たビタミンDは、肝臓と腎臓で代謝され、最終的には活性化ビタミンDへと変化することでその効果を発揮する。活性化ビタミンDは骨の素材となるカルシウムの吸収を助け、カルシウム摂取が不足している場合には尿中からカルシウムを再吸収するように働く。

骨の健康に欠かせないカルシウムには、ビタミンDの助けがあってこそ効率的に活用される

したがって、飼育環境下で紫外線を当てていても当然カルシウムの添加は必要だし、夜行性の種類でも、カルシウムの吸収のためにビタミンDの添加は必要である。

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日常のエサで不足しがちな栄養素はサプリメントで補うことが爬虫類飼育の常識になっている。

特に幼体から生体になる過程の成長期においてはサプリメントによる栄養管理が特に重要で、 カルシウムの不足などが骨の疾患につながるケースがよくある。

現在、多くのメーカーから様々なサプリメントが市販されている。主にカルシウムを主成分にしたものが多く、カルシウムだけを配合したサプリメントの他、ビタミンDが加えられたもの、ビタミン類が複数配合されたもの等がある。 カルシウムだけの製品は紫外線の供給量が十分な場合に、紫外線が不足しやすい生体や夜行性の種類はビタミンD配合の製品を選ぶと良い

形状はパウダータイプが主流で、パウダーはエサとして与えるコオロギやミルワーム、野菜などにふりかけるダスティングという方法が一般的である。リキッドタイプもあり、これは飲み水に数的混ぜたり、ヤモリには霧吹きをして与えても良いだろう。 このほか、生餌にビタミンやミネラルを強化したエサを食べさせて栄養価を高めるガットローディングという方法もある。

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サプリメントの与え過ぎには注意が必要だが、現状では過剰摂取による障害はほとんど報告されていない。圧倒的に多いのはビタミン・ミネラルの不足による障害なので、不足の状態が続かないように定期的にサプリメント与えるように心がけましょう。

Y.N.