南が丘動物通信

猫の消化器型リンパ腫 16年11月20日

 犬猫も人同様、加齢とともに腫瘍性疾患が多く発生します。猫では造血器腫瘍が腫瘍の三分の一を占め、そのうちの50~90%がリンパ腫と言われ、特に発生が多くなっています。1960~80年代は猫白血病ウイルスによる若い猫での縦隔型と多中心型リンパ腫がほとんどでしたが、21世紀の現在ではウイルス感染に依存しない老齢猫での消化器型リンパ腫が圧倒的に多くなりました。
 胃から直腸までのすべての消化管に発生しますが小腸が最も多いです。嘔吐や下痢は半数程度しか見られず、食欲不振や体重減少が認められるだけの猫が多く、発見が遅れがちです。胃腸に明らかな腫瘤ができるというよりはただ厚くなるだけだったり、また内視鏡の届かない部分に発生しやすいことも発見を遅れさせる要因になります。よって理想は開腹下での組織生検での診断ですが、状態によりそれが難しいこともあり、診断的治療を行うこともしばしばです。
 組織グレードにより高グレード(高悪性度)、低グレード(低悪性度)に分類されますが、いずれも治療は抗がん剤がメインになります。抗がん剤治療に対する飼い主さんの持つイメージは悪いですが、猫では重篤な副作用が現ることはまれで、多くの猫が許容できます。高グレードでは数ヶ月、低グレードでは年単位で頑張ってくれます。
 猫はどんな病気でも多くは発見が遅れます。高齢の子で少しでも体調の変化があった場合は早めの受診をおすすめいたします。

T.S.