南が丘動物通信

口腔内善玉菌を使用した治療"プロバイオティクス" 16年05月15日

飼育動物の口腔疾患、とくに歯周病への飼い主様の意識が高まっている半面、動物の行動学的な観点から口腔内ブラッシングができない場合や、高齢及び病的状態により全身麻酔下での歯石除去処置が行えない場合など口腔内の健康維持に苦慮されているケースも少なくありません。近年、口腔内善玉菌Streptococcus salivarius K12M18を使用した治療"プロバイオティクス"が注目されています。

"プロバイオティクス"は耳慣れないフレーズかもしれません。プロバイオティクス(probiotics)は抗生物質(antibiotics)に対比される言葉です。アンチバイオティクスは、「病気になってから細菌を制圧する」という治療方法であるのに対して、プロバイオティクスは「病気にならないように体に善い菌を積極的に増やし健康を守ろう」という予防的側面から生まれた言葉です。

口腔内におけるプロバイオティクスS. salivarius K12M18は、ヒトの口腔内に存在する"乳酸菌の一種"であり、健康な口腔内での主要な善玉菌です。抗菌性タンパク質BLISbacteriocin-like inhibitory substances)を産生し、これにより嫌気性菌の増殖を阻害し、口腔内に善玉菌優位な環境を作ることで、犬の口臭の改善と歯周病の進行阻止および予防が可能なことが近年の研究でわかってきました。

また猫の口内炎症例においても、口腔内への免疫調節作用や抗炎症作用から口内炎の痛みに対する減弱効果が期待されております。

S. salivarius K12およびM18を用いた動物用サプリメントは嗜好性も高く、錠剤の状態でも投薬が簡単です。病原細菌が増殖しやすい歯周ポケットにより近いところに善玉菌を増殖させてあげたほうがその効果は高まると推測されるので、粉にしたものを直接歯肉に塗布したり、少量の水に溶かして液状にして与えたりするとより効果的とも言われております。

ワンちゃん、ネコちゃんの口臭や歯周病が気になっている飼い主様はぜひご相談ください。

H.B.