南が丘動物通信

犬のレプトスピラ症(Leptospira interrogans) 14年08月24日

レプトスピラとは螺旋状のスピロヘータ類に含まれ、人獣共通感染症で動物からヒトに感染する。犬のレプトスピラ症は犬で唯一の監視伝染病で、罹患又は罹患している疑いがあれば、獣医師は遅滞なく、都道府県知事に届け出なければならない感染症の一つである。
レプトスピラは温暖な地域(沖縄、九州、四国等)でしばしば認められ、近畿でも発生する報告がなされている。因みに、本院が所在する三田市は他の地域と比較し感染リスクが高い。
発症は夏から初秋にかけて頻繁に認められ、その数は大雨の年には増加する傾向がある。感染源は保菌動物の尿で、主に犬への感染は野生のタヌキ・アライグマ・ネズミの尿が多い。尿中のレプトスピラは、体表の擦り傷や健康な粘膜を介して侵入する。また菌は咬み傷、性交、胎盤からも侵入し、さらに汚染された組織、土壌、水、食物その他媒介物の摂取によっても感染する。犬においては肝臓と腎臓内で顕著に増殖し、肝臓病及び腎臓病を引き起こすことがある。犬では、感染後2~3週間後に自然治癒する場合もあるが、慢性進行性肝炎、慢性腎臓病に移行する。甚急性例では、乏尿性・無尿性の急性腎不全を引き起こすリスクもある。
レプトスピラ症は品種・年齢・性別に関係なく感染する可能性がある。症状は、甚急性例では元気消失、食欲廃絶、下痢・嘔吐等の消化器症状、黒色タール便・鼻出血・点状出血・斑状出血などの止血機能異常、乏尿・無尿、肝性黄疸、ブドウ膜炎、発咳など様々な症状を起こし得る。山、池や河川周辺にワンちゃんを連れて行き、このような症状が認められたら最寄の動物病院で一度診察を受けることをお勧めします。 D.T