南が丘動物通信

歯周炎 14年06月29日

 歯周炎という語は歯の周囲にある組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨)の炎症という意味です。その同義語として、歯周病、歯槽膿漏、歯槽骨膜炎などがあります。アメリカの調査によると、6歳以上の小動物のおよそ85%に、臨床的に重大な段階に達した歯周疾患が存在しています。もし治療を怠れば、着実に進行し、潜行性で確実に破壊的な経過を辿る疾患です。
歯周炎の初期は付着歯肉の局所的な炎症始まり、次に歯根膜の炎症性・退行性変化、歯槽骨への侵蝕、そして歯肉組織の退縮へと進行していきます。歯を支持する歯槽骨が破壊されると、歯は動揺するようになります。その原因は、歯肉縁に認められるプラ―ク(歯垢)です。プラ―クは、食物残渣、剥離した細胞、唾液中の糖蛋白及び特定の細菌種(L型連鎖球菌が多い)によって構成されています。プラ―ク以外にもいくつかの要因が歯周疾患の発生、増悪に関与しています。遺伝的要因あるいは動物種、軟らかな食餌等です。軟らかな食餌は微片が歯肉縁の周囲に付着しやすいからです。老齢動物の口腔組織は再生能が不十分なので動物の年齢も歯周疾患の進行に関与しています。これら歯周組織の健康維持はホーム・ケア(家庭管理)によって予防可能です。日常的にホーム・ケアにあたるブラッシングを行うことで口臭の除去促進及び歯の喪失とその結果生ずる咀嚼困難や採食不能、歯周膿瘍の形成、臨床的に重要な菌血症を未然に防ぐことが可能です。ホーム・ケアすなわちブラッシングはプラ―クの除去ならびにプラ―クの発育抑制を成し遂げます。飼い主はペットが毎日のブラッシングを我慢してやらせるようにトレーニングする必要性があります。これには、飼い主としての決断と忍耐がいります。
初めから、ハブラシで口腔ケアをさせてくれるものなら忍耐など必要ありませんが、そう簡単にはいきません。まずは指の周りにガーゼを巻きつけてペットの歯を拭く等して口腔内を触ることに対して習慣付ける必要があります。それを我慢してできれば、褒美を与えるという感じで毎日繰り返します。ある程度慣れてきてからハブラシによる口腔内ケアを始めます。ハブラシによるブラッシングを嫌がらないようにするために、風味のきいた動物用歯磨きを使用するのも効果的です。人間用に作られた歯磨きは絶対に使用するべきではありません。なぜなら、この使用は動物の胃腸障害につながるからです。
ブラッシングの方法は、軟毛性の小型のハブラシを頬と歯肉の間に入れます。歯の長軸に対して45°の角度で当てて、小さな範囲をブラッシングします。この操作を歯列全体にわたって繰り返します。終わったら褒美を与えます。それを日々定期的に飼い主が忍耐強く実践することによってペットのブラッシングが困難となることはないでしょう。健康な歯を保持するための他の手段としては軟らかい食物よりも堅固な硬いものを食べさせることです。これは、プラ―ク除去はできませんがプラ―ク沈着率が低いためです。同様に、革製のチューイングガムや他の玩具も多少プラ―クの沈着を抑えてくれることでしょう。そして、チューイング(噛むこと)は歯の歯周靭帯(すなわち歯根膜)を鍛錬して強くしてくれます。なかなか面倒なこととは思いますが、動物達の健康を保持してあげるためにも実践してみる価値は十分にあるのではないでしょうか。                             D.T