南が丘動物通信

犬の僧帽弁閉鎖不全症 09年06月05日

心臓には①右心房、②右心室、③左心房、④左心室 の4つの部屋があり、血液は、大静脈→右心房→右心室→肺動脈→(肺)→肺静脈→左心房→左心室→大動脈→(全身) といった経路で循環しています。これら心臓の部屋の出入り口には逆流を防ぐ弁が備わっており、左心房と左心室の間にある弁が僧帽弁です。
僧帽弁閉鎖不全症とは、僧帽弁が様々な原因によって閉じなくなり、心臓から全身へ血液を送り出す際に逆流を生じてしまう疾患です。全身に送り出すはずの血液が逆流して心臓(左心房)内に残ることにより、①全身に血液が行き渡らなくなる、②心臓が肥大し、気管支を圧迫する、③肺静脈→左心房への循環が悪化して肺がうっ血する、などの障害が起こります。その結果、咳や呼吸困難、貧血状態により疲れやすくなる、急に倒れる、などといった症状が見られ、適切な治療を行わないと重度の呼吸困難や多臓器不全により死に至ります。一部の犬種(キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなど)を除いては、高齢になるほどよく認められ、大型犬よりは小型犬によく認められます。
治療は、完治を目指すには弁置換術などの難易度の高い外科手術が必要であるため、一般的には病気の進行を遅らせるための食事管理や投薬治療が行われます。早期の投薬治療により生存期間が延びるという報告もあるため、早期発見・早期治療が重要となります。しかし、上記の症状が見られるのは病気がかなり進行してからになるため、早期に発見するためにも定期的な検診をお勧めいたします。