診療案内

猫の甲状腺機能亢進症 内科療法・外科手術

猫の甲状腺機能亢進症は9歳以上の1割が罹患していると言われております。症状は体重減少、多食、多飲多尿、嘔吐、下痢、性格の変化など様々です。放置しておくと腎不全、高血圧、心臓病、衰弱、悪液質と進行していきます。甲状腺は腺腫性過形成がおおく甲状腺がんは比較的まれです。治療法は、内科療法、外科療法があります。海外で行われている放射性ヨード療法は施設や法律の関係から残念ながら現在の日本では行なうことはできません。下記に内科療法、外科療法の利点と欠点をあげてみます。

内科療法

長所

  • どのような施設でも治療可能です。
  • 一度に多額の費用は必要ありません。

短所

  • 毎日の投薬、繰り返しの血液検査、通院が必須になります。
  • 6~12週間でコントロールできる症例もあると言われていますがほとんどの猫で生涯にわたっての投薬が必要です。
  • 副作用が約2割に起こると言われており食欲不振、嘔吐、肝炎、顔面・頸部自傷性剥離貧血、血小板減少症などがあります。
  • 甲状腺の値を内服でコントロールできているようでも腎不全、心不全、高血圧など病状は進行するものもおおく外科療法に比べると短命になるようです。
  • 長期的にみると費用は外科療法より高額になります。

外科療法

長所

  • 根治的です。
  • 日々の内服、検査から解放され通院の必要はなくなります。
  • 猫の内服によるストレスから解放され、飼い主と動物の良い関係を保つことができます。
  • 術後98%以上の症例で甲状腺ホルモンを与える必要はありません。
  • 内服治療や検査を継続するより長期的にみると安価になります。
  • 長寿、生活の質の向上が期待できます。

短所

  • 一時に多額な費用が必要になります。
  • 上皮正体機能低下症、反回神経損傷からくる喉頭麻痺等の医原性障害の危険性やきれいに取り切れないと再発の可能性があり術者をえらぶ繊細な手術になります。
  • 永続性甲状腺機能低下症が2%以下の確率ですが起きる可能性があります。
  • 進行し過ぎた症例ではリスクが高くなります。

外科療法は内科療法に比べたくさんのメリットがあります。抗甲状腺薬の副作用でたいへんな猫ちゃんたちも、食事変更、少量投薬、回数変更等によるコントロールののち手術を行い元気な生活を送れるようになっています。

写真:甲状腺両側摘出手術前

甲状腺両側摘出手術前

写真:甲状腺両側摘出手術後

甲状腺両側摘出手術後

写真は以前飼っていた私の飼い猫ですが、日本で初めて甲状腺両側摘出手術を論文で報告した猫です。片側摘出後3年後に再発したのですが、当時両側摘出をおこなうと死亡すると言われていたころで、はじめは抗甲状腺薬を投与していました。ホルモン値は比較的良好でしたが食欲不振で体重1.16㎏になり不整脈も落ち着かず、思い切って手術をしたところ経過良好で10ヵ月後には2.88㎏になり天寿を全うしました。この経験より手術をお勧めするケースが多くなっています。当院では多数の猫の甲状腺摘出手術を行っていますが現在まですべて順調に経過しております。手術の平均年齢は16歳で最高齢は26歳です。甲状腺の左右の大きさや位置まれにある異所性甲状腺の確認のためCT撮影ののち手術を行います。両側腫大の場合は1カ月以上の間隔をあけて片方ずつ手術をおこないます。手術適応症であるかどうかは診察にて判断させていただきます。
当院で、たくさんの猫ちゃんが手術を受けられています。セカンドオピニオンをご希望の方もご相談ください。

上皮正体は甲状腺の頭側に付着していてカルシウムをコントロールする大切な臓器です。甲状腺摘出手術の際に上皮正体の機能を残せるかどうかが最も重要になります。吉田獣医師の論文「猫の甲状腺機能亢進症における上皮正体の位置と手術法」がMVMに掲載されました。