南が丘動物通信

9月15日 志学会 消化器疾患 検査データから病態を読む 19年09月15日

消化器疾患 検査データから病態を読む

鳥巣至道先生 宮崎大学農学部付属動物病院 消化器外科・内科

今回のセミナーでは消化器疾患のいくつかの症例をご紹介いただき、症例に対するアプローチのしかたや、考え方などを学びました。

1つ目の症例は『胆嚢粘液嚢腫』

胆嚢粘液嚢腫では通常手術は行いませんが、そのリスクにかんしてオーナー様に正しく理解していただき、緊急のサインを見逃さないようにしなければなりません。まず、胆汁は消化液であり、胆嚢破裂がおこってしまった場合には胆汁性の腹膜炎がおこり最悪場合死亡します。破裂しなくても胆管に胆泥が溜まってしまった場合は黄疸や肝臓の障害がおこる場合があります。緊急のサインとしては頻回の嘔吐や食欲の低下、活動性の低下、尿の色の変化などがあります。特に尿の色は通常の黄色から紅茶のような色に変わります。これらのリスクをしっかり理解し、サインを把握することでワンちゃんの体の異変にいち早く気づくことができます。

2つ目の症例は『腹水』

腹水はいくつかの原因によっておこりますが、今回のケースでは肝臓の機能低下によりアルブミンの産生が低下し血液中の浸透圧が低下することによる腹水貯留でした。肝臓は様々な機能を担う臓器ですが、アルブミンを産生するためには材料となるアミノ酸が必要となります。しかし、肝機能が落ちてしまうと体のアミノ酸バランスがくずれ、アルブミンを十分量生産できなくなり腹水が貯留してしまいます。よって、サプリメントなどで必要なアミノ酸を補給しアルブミンを作らせることで血管内の浸透圧を通常にもどし、場合によっては低ナトリウム食事療法によって血管からもれだした腹水を再び血管内に吸収させることができます。

肝臓は様々な機能を有しており、機能が落ちるといろいろな症状がでてきます。その症状にしっかり理由付けをし適切に処置していくことが大切であり、そのためには正しい知識が大切であることを学びました。今後の診察・治療に生かしていけるよう頑張りたいと思います。

K・G