南が丘動物通信

猫の心因性脱毛症 18年02月25日

 心因性脱毛症とは、何らかの精神的もしくは情動的な原因により、猫が体の一部または数カ所を過剰にグルーミングする事により、被毛が薄くなったり、脱毛してしまう疾患です。脱毛部は腹部、鼡径部、腰部外側面、前肢、尾など様々で、左右対称性であることも非対称性であることもあります。また、全身に及ぶこともあります。通常は皮膚には変化は認められませんが、過剰なグルーミングの結果、外傷性皮膚炎が起こることもあります。本来、グルーミングは猫の正常な行動パターンの一つであり、グルーミングをすることで不安、不満、葛藤などのストレスを軽減することが出来るとも言われています。しかし、ストレスが慢性的に持続した場合、本来ストレスを軽減するための行動が、当初のストレス刺激とは関係なく発現し、それが維持されて過剰になった際に心因性脱毛症に発展すると考えられています。猫がストレスを感じる原因としては、環境の変化や分離不安など様々なことが挙げられますが、身体的な痛みや不快感などの身体的な異常から心因性脱毛症に発展することもあります。よって心因性脱毛症を診断するには、他の疾患の除外が必要不可欠となります。特に、アレルギー性皮膚炎や外部寄生虫疾患は同様の皮膚病変が認められることがあるため鑑別が重要となります。

 治療には明らかなストレス要因が特定できる場合には、それを最小限にしたり回避したりする工夫を凝らすなど、行動療法で改善することが目標となります。しかし、原因不明な場合、あるいは原因の修正が困難な場合には薬物療法も必要となります。

 心因性脱毛症は、長期的な治療が必要となることが多い疾患です。原因を特定し、改善するのは容易なことではなく、飼い主様と獣医師の意思疎通、あるいは信頼関係が重要となります。最近、グルーミングが多くなって毛が薄くなってきたな、と思うようなことがあればご相談下さい。

T.H.