南が丘動物通信

β細胞癌 17年05月21日

 β細胞癌は、以前はインスリノーマと呼ばれていた膵島β細胞の機能性腫瘍で、非常に悪性度が高く、リンパ節や肝臓、腸間膜などに高率に転移します。この腫瘍は血糖値上昇に反応してインスリンを過剰分泌するため、食後2~6時間あるいは運動、興奮後に低血糖による臨床症状が発現します。

 発症年齢は平均9.5歳(3~14歳)で、全ての体格、多くの犬種で報告されていますが、スタンダード・プードル、ボクサー、ジャーマン・シェパード、アイリッシュ・セター、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバーなどで多く発生が認められています。

 診断には、低血糖の存在を確認し、他の低血糖の原因を除外する必要があります。低血糖の際に測定したインスリン濃度が高値の場合にはβ細胞癌が強く疑われますが、低血糖が起こる症例においても血清インスリン濃度の上昇が見られたものは68%しかないと言われているため、正常値や低値であった場合にも否定はできません。その他の検査としては、超音波検査やCT検査において膵臓領域に腫瘤を確認することですが、検出率は高くはありません。

 治療には、転移が確認されない場合には外科的な摘出が選択されますが、前述の通り、診断時には転移が起こっている可能性が高いため、内科的治療が選択される場合が多いです。内科的治療としては、プレドニゾロンやジアゾキシドなどを使用し、インスリンの分泌抑制や作用の拮抗を行います。

T.H.