南が丘動物通信

脂腺炎 16年05月08日

 脂腺炎は、皮脂腺の破壊により生じる皮膚疾患で、病態として免疫が関与していると考えられていますが、詳細は十分に解明されていません。様々な犬種で認められる疾患ですが、好発犬種として秋田犬、プードル、ジャーマン・シェパード・ドッグ、サモエド、スプリンガー・スパニエルなどが挙げられ、秋田犬やプードルにおいては常染色体劣性遺伝が指摘されています。若齢から中齢で認められることが多いですが、あるゆる年齢で起こり得ます。

 皮膚症状は、初期においては鱗屑(ふけ)や紅斑のみが見られることがあり、その他被毛の色調変化(淡色に変化)や毛質の変化を認めることもあります。症状が進行すると、全身に厚い鱗屑を伴う脱毛や薄毛が認められ、毛を束ねるように鱗屑が付着した毛包円柱なども見られるようになります。痒みの程度は様々で、ほとんど見られない場合や激しい痒みを認める場合もあります。痒みがある場合は、細菌性毛包炎や皮膚の乾燥等が関与していることが多いです。一方、ミニチュア・ピンシャー、ビーグル、ミニチュア・ダックスフンドなどの短毛種における脂腺炎は、長毛種で見られるような全身性の皮膚症状が起こることはまれで、局所的に鱗屑を伴う脱毛斑が形成されます。脱毛斑は頭部や背部、耳介などに認められます。

 治療は、軽症例においては、鱗屑の除去を目的に角質溶解作用のある硫黄サリチル酸シャンプーを用いたシャンプー療法と、その後の保湿を目的としたプロピレングリコールやベビーオイルを塗布する治療が行われます。重症例においては、上記の治療に加え免疫抑制剤やビタミンA製剤などの投薬が行われます。

 脂腺炎は、前述の通り病態が完全に解明されているわけではないため、残念ながら治療によってすべての症例で十分な改善が見られるとは限らず、改善したとしても生涯に渡る治療が必要となります。

T.H.