南が丘動物通信

放射線治療の基礎知識 16年04月24日

放射線は細胞内の遺伝子を傷害することによって生物にダメージを与えるのですが、この特性を活かして腫瘍を局所制御する治療法が放射線治療です。手術、化学療法(抗がん剤)に並ぶ腫瘍治療の3大治療法のうちのひとつが放射線治療ですが、放射線に対するイメージ、そして扱える施設が多くない事からあまり馴染みのない治療法になってしまっています(特に飼い主様に)

 放射線治療は手術と異なり、臓器や組織の形態や機能を大きく損なうことなく腫瘍を叩くことができるのが最大の特徴です。そのため人でも動物でも、首よりも上の部位における腫瘍に用いられることが多くなっています。また補助治療として手術で取りきれない腫瘍部分に治療を行ったり、また手術が難しい腫瘍(鼻の腫瘍など)に対して実施することができます。また局所治療であるため、副作用も局所的で済むということも利点になります。

 放射線障害という副作用が欠点としてあげられます。放射線治療を何回も繰り返しの治療が必要であり、この障害を少なくすることが求められるため厳密なスケジュールを計画することが求められます。またすべての腫瘍に同様に効くわけではなく、各組織の放射線感受性によって治療の反応が異なる事にも注意が必要となります。

 いまは人も動物も癌が増えており、さまざまな治療法が存在します。もちろん腫瘍の種類や発生した部位によっては放射線治療が適用になるケースも少なくありません。ご紹介させていただく形にはなってしまうのですが、飼い主様によりよい治療法を複数ご提案できたらと思っています。

T.S.