南が丘動物通信

顔面神経麻痺 15年09月20日

顔面神経麻痺の臨床兆候とは眼瞼を閉じられない、口唇や耳を動かすことができないことです。顔面神経麻痺の原因として多いのは炎症、感染、腫瘍から二次的に生じた中耳内の顔面神経分枝の損傷です。中耳炎や内耳炎は通常細菌性外耳炎が波及して起こるため、コッカ―・スパニエルやジャーマン・シェパードなど外耳炎の好発犬種では注意が必要です。外傷や草木などの異物、悪性腫瘍、中耳領域の鼻咽頭ポリープも顔面神経麻痺を起す原因となります。犬の甲状腺機能低下症ではときおり顔面神経麻痺が認められます。しかし、犬の75%、猫の25%は原因不明で、顔面神経麻痺以外に特別な異常はありません。

中耳疾患による顔面神経麻痺の場合は、中耳と内耳領域内で神経が近接しているので末梢性の前庭系障害やホルネル症候群も併発することが多いです。また、顔面神経麻痺では顔面神経刺激による涙腺の分泌不足により乾性角結膜炎を発症する可能性もあります。

特発性の顔面神経麻痺はその他のすべての原因を除去して初めて診断されます。血液検査での全身的な検査、脳神経障害や運動失調がないかどうか、甲状腺機能低下症の有無などを評価する必要があります。

特発性顔面神経麻痺に対する特効薬はありません。麻痺は永続することもあれば26週間で自然に回復することもあります。鍼による刺激や顔面の筋肉のマッサージが効果があるとも言われています。

先日、3か月齢の子犬さんが突然瞬きできなくなって来院されました。特発性の顔面神経麻痺と診断し、ビタミン剤の内服と週2回のオゾン療法(注腸法)に通ってもらい、治療を始めて1か月になりますが、今ではかなりしっかり瞬きできるようになっています。

M.M.