南が丘動物通信

原発性上皮小体機能亢進症 15年08月16日

原発性上皮小体機能亢進症

原発性上皮小体機能亢進症は中高齢以上で見られる疾患で、原因として過形成、上皮小体腺腫、上皮小体の癌が挙げられます。

上皮小体は上皮小体ホルモン(PTH)を分泌する組織で、甲状腺内あるいは甲状腺の近傍に存在し、副甲状腺とも呼ばれます。PTHはカルシトニンやビタミンDと相互に作用してカルシウム、リン酸、マグネシウムの恒常性の維持を担っており、血中のカルシウム濃度が高いときは低用量で骨形成を増加させ、逆に低いときには高容量では骨再吸収を増加させると同時に腎臓でのカルシウムの再吸収を骨再吸収に一緒に吸収されるリンの排泄の増加を促します。

原発性上昇体機能亢進症では機能性の細胞が増えていくことによってこのPHTの分泌が過剰になり、高カルシウム血症、骨吸収、カルシウム腎症が生じます。多くの症例では高カルシウム血症性腎症により多飲多尿状態になります。他の症状としては骨折や、便秘や食欲不振。腎結石、筋力の低下が見られます。

診断としては高カルシウム血症が見られる場合で原発性上皮小体機能亢進症を疑いますが、高カルシウム血症は他に腎臓病や、腫瘍からの上皮小体関連タンパク(PTHrP)の分泌によっても見られその鑑別診断が必要となります。腎臓病での高カルシウム血症は血液のリン濃度が上昇することによって血中のカルシウムイオンとリンが結合し、遊離カルシウムイオンが減少することによってPTH分泌が増加します。この結果、高カルシウム高リン血症となります。原発性上皮小体機能亢進症ではPTHが過剰分泌されることによってカルシウムの再吸収とリンの排泄が促進されるため高カルシウム低リン血症になることで鑑別が可能です。また、腫瘍による高カルシウム血症は腫瘍からのPTHrPにより生じるのでPTH自体は増加しないため、PTHの測定により鑑別が可能です。

治療は外科的手術が第一選択になります。摘出後過形成、腺腫、癌の鑑別は病理組織検査を行わなければ鑑別は不可能ですが、癌であった場合でも転移の確率は低く予後は術後の血中カルシウム濃度管理をしっかりと行えば予後はほとんどの症例で良好となります。

S.A