南が丘動物通信

猫の心因性脱毛・過度のグルーミング 15年03月22日

 病気の原因はストレスですか?と聞かれることがよくありますが、多くの病気はストレスとはほとんど関係がありません。しかし特に猫では、心理的な要因で過度にグルーミングを行った結果、体の一部あるいは全体の毛が薄くなってしてしまうという脱毛症があります。鼠径部、腹部、内側や尾側の大腿部周辺に最も多く見られます。
 まずはもちろん一般的な皮膚病を除外する事が大事です。食物アレルギーや寄生虫、皮膚糸状菌症などを検査するとともに、それだけではなく全身的な健康診断も必要になります。これは体の不調から過度のグルーミングを起こすこともあるからで、血液検査や尿検査、甲状腺機能検査を行います。
 上記が問題なければ、家族構成の変化(人間、猫)、家庭環境(運動やトイレ)、脱毛の進行状況、きっかけとなるような出来事の有無、叱責の有無などを確認します。問診をもとに行動修正を開始しますが、舐めるのを防止するためのカラーなどは推奨されません。舐めるのはやめますが不安と欲求は増加するからです。きっかけが特定できる場合はそれを除去するのが優先です。他にも猫同士の隔離、休息場所の確保、トイレの増設、十分な運動の確保などを行います。きっかけが除去できない場合は計画的に脱感作(少しずつ慣らす)を行ったり、飼い主さんとのコミュニケーションを増やしたり、グルーミングを開始したら気を逸らして遊ぶようにします。怒っても逆効果なのでそれもやめます。なかなかきっかけを特定することは難しい事も多いので、猫が暮らしやすい環境づくりをしてあげるのが重要です。
 必要ならば不安やストレスを軽減する為に薬物療法を併用します。多くの場合4週間以上の投薬が必要で、アミトリプチリン、クロミプラミン、フルオキセチンなどを使用します。また猫に安心感を与えるフェイシャルホルモンを拡散させるフェリウェイという商品もあり、これをお部屋に設置することで効果のみられる猫もいます。お困りの際はご相談ください。