南が丘動物通信

肺血栓塞栓症 15年02月01日

 血栓には血管が破綻した時に出血を防ぐために生じる生理的な血栓と血管内や心臓内に出来る病的な血栓があります。肺血栓塞栓症は肺動脈に生じる病的な血栓ですが、血栓が比較的小さく量も少ない時は無症状の場合もありますが、肺血栓塞栓症の発症に気付かずに小さな血栓を放置すると塞栓の程度が重くなり、低酸素血症を発症し呼吸困難に陥って、最終的には右心不全、ショックなどによって死に至ります。したがって、発症を早期かつ的確に診断し、塞栓の程度を悪化させない治療を行うことが重要になります。肺血栓塞栓症の診断は、胸部X線検査、動脈血ガス分析、犬糸状虫検査、心臓超音波検査、D-dimer測定、トロンボエラストグラフィー、肺血管造影、ヘリカルコンピュータ断層撮影(CT)などの各種検査にて行いますが、診断が困難であることが少なくありません。よって肺血栓塞栓症では発症してからの対策を考えるのではなく、発症させないことが重要となります。肺血栓塞栓症の素因となる免疫介在性溶血性貧血、副腎皮質機能亢進症、糖尿病、肥満、膵炎、ネフローゼ症候群、悪性腫瘍、敗血症などの疾患がある場合には、各種検査により血液凝固亢進状態が疑われる場合には改善を目的とした抗血液凝固療法を実施し、必要に応じて抗血小板療法も合わせて行います。肺血栓塞栓は、軽度であれば通常特に治療を行わなくても形成されてから数時間のうちに溶解し始め、数日のうちに完全溶解します。しかし、血栓形成傾向が持続し続けると塞栓が形成し続けます。よって上記のような基礎疾患に対する治療を行うことが肺血栓塞栓症を治療することにもなり、また同時に予防することにもなります。 T.H.