南が丘動物通信

分子標的薬 14年02月09日

 分子標的薬とはがん細胞が増殖する際に現れる特定の分子をターゲットに、その働きを阻害することでがんの増殖や転移を抑制する薬剤で、狭い意味での抗癌剤です。多くの抗癌剤は細胞のDNAや蛋白合成をターゲットにしているため、正常細胞・組織への障害も現れてしまいますが、分子標的薬はがん細胞に特徴的な分子をターゲットにしているために正常組織への影響は小さくなります。また特定の遺伝子が患者の腫瘍に発現しているか調べてから使用することで、治療効果をある程度知ることもできます。
 分子標的薬のひとつ、イマチニブは人では慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病などが適用となります。このイマチニブは獣医療でも使用され、特に肥満細胞腫と消化管間質腫瘍での効果が期待されます。さらに近年ではトセラニブという新規の分子標的薬も登場し、肥満細胞腫や様々な固形癌、肛門嚢腺癌への適用が期待されます。
 分子標的薬はシグナル伝達をブロックするだけでなく、血管新生阻害や細胞周期の調節などでも抗腫瘍効果を示します。この薬は生活の質を保ちながら抗腫瘍効果も得られるのでとても使いやすいのも利点です。
T.S.