南が丘動物通信

7月6日・7日 第9回日本獣医がん学会 13年07月08日

7月6日から7日にかけて麻布大学にて第9回日本獣医がん学会が開催されました。
認定医講習会や症例検討会に参加し、獣医腫瘍学の基礎から最新の治験など様々な情報を得ることができました。

今回のシンポジウムのメインテーマは「乳腺腫瘍」ということで、北海道大学獣医外科学教室の細谷謙次先生は「イヌとネコの乳腺腫瘍に対する診断的アプローチと治療法の選択」について講演されました。

乳腺腫瘍は日常の臨床現場において最もよく遭遇する腫瘍の一つであり、とくに日本では早期不妊手術が広く普及しているとは言いきれず、依然としてその発生頻度は高いと言われています。乳腺腫瘍は、イヌにおいては約50%、猫では約80%が組織学的に悪性であるといわれており、予後の指標として術前の悪性度判定が重要と考えられています。しかしながら、他の腫瘍と異なり、とくにイヌの乳腺腫瘍では術前細胞診断において良性/悪性の明確な区別が困難な場合が多いと言われています。今回、細谷先生が紹介されたのは、マイクロサテライト解析を用いた乳腺腫瘍の術前の良悪判定法でした。マイクロサテライトとはゲノム中に散在する塩基の反復配列であり、細胞の腫瘍化にともないゲノムが不安定になるとマイクロサテライト領域にも不安定性が塩基配列の異常という形で認められ、これを検出することで、腫瘍の悪性度を判定するというものです。顕微鏡をのぞく者の熟練度に多少なりとも依存される細胞診断に比べて、より高い客観性が維持されているという利点があります。腫瘍のグレード判定や臨床的予後を予測する新たな術前検査法として広く普及する可能性があり、今後の研究の進展が注目されています。