南が丘動物通信

猫のフィラリア症 12年07月04日

犬のフィラリア症は、飼い主様の理解と予防は進んでおりますが、猫に対するフィラリア症は、まだまだ犬よりも周知されていないのが現状です。猫のフィラリアの寄生率は犬のフィラリアの寄生率が高い地域だと、猫でも高い寄生率になり、猫の成虫寄生率は犬の寄生率の5から20%と言われています。感染は犬と同じく、蚊から感染します。犬と違い、ゆっくり時間をかけて成長したフィラリアの未成熟虫が肺動脈(犬での成虫の寄生場所)に到達すると多くの場合未成熟虫は死亡し、死滅虫体による炎症が起こります。また一部の猫では少数の未成熟虫が成虫になり2〜4年生存する事もあります。
犬と猫のフィラリア症は色々の点で異なっているために注意が必要です。犬ではおもに成熟した成虫により症状がおこってきますが、猫では成虫だけでなく未成熟虫が激しい病変を肺におこします。フィラリアの死滅虫体は犬と同様に、肺の血管などが急に炎症をおこします。この時発咳や呼吸困難、嘔吐などを示す事がありますが、症状が認められないこともあります。また成虫になったあと、その虫体の変性が、重度の炎症や血液の中での血栓症を誘起し、重篤な症状や突然死を引き起こすことがあります。突然死は成虫感染猫の10~20%とたかい確率でおこります。さらに猫ではHARD(犬糸状虫随伴呼吸器症候群)という成熟した成虫にならなくても未成熟虫によってひきおこされる猫の呼吸器症候群がおこります。慢性的な呼吸器疾患は猫の喘息と似かよっており判断が困難です。猫のフィラリア症は抗原、抗体検査、レントゲン検査、超音波検査を組み合わせて評価します。猫がフィラリアにかかる割合は成虫寄生率から判断されていた確率と比べはるかに多い確立であると思われます。

予防的な薬としては、セラメクチンという薬があります。スポットオンタイプの薬剤(背中に塗るタイプの薬)がありますので、ぜひ当院にご相談ください