南が丘動物通信

多発性骨髄腫 12年06月19日

 骨髄腫という病名ですが形質細胞の腫瘍であり、造血器系腫瘍に分類されます。症状や診断方法がかなり特徴的です。
 形質細胞は免疫グロブリン(Ig)を産生するため、多発性骨髄腫ではIgAやIgGの過剰産生が生じ、しかもそれらは不完全なIg断片も形成するために多くの問題を起こします。その不完全なIg断片はベンスジョーンズ蛋白といわれ尿中に現れます。過剰Igのために血液は過粘稠となり、出血傾向、血球凝集、中枢神経症状などを呈します。血液検査で単クローン性高ガンマグロブリン血症(モノクローナルガンモパチー)をみられます。
 骨髄内で腫瘍細胞が増殖し、形質細胞増多が重度になると骨髄癆を起こし、貧血や血球減少、それに伴い感染症リスクが上がることで膀胱炎などを起こしやすくなります。多発性に骨融解を起こすためにびまん性に骨粗そう症や骨折を招きます。骨融解による高カルシウム血症、またそれに付随する腎障害も現れます。レントゲン検査では骨融解病変が虫食い状に見られるパンチアウト像が特徴です(下図)。
 以上をまとめると・・・
 単クローン性高ガンマグロブリン血症
 骨融解病変(パンチアウト)
 ベンスジョーンズ蛋白尿
 骨髄における腫瘍性形質細胞出現または形質細胞増多症
 これらが特徴所見であり、また診断の条件となっていることが多いです。
 治療は化学療法が第一選択であり、メルファランとプレドニゾロンの併用が行われます。また高カルシウム血症や骨融解、腎障害などに対する処置も必要となります。高カルシウム血症に対してはビスフォスフォネート製剤が、一般状態・症状の改善に非常に有効と言われており、当院でもそのように実感しております。

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