南が丘動物通信

腫瘍溶解症候群 12年05月01日

 腫瘍の治療開始後早期に、腫瘍細胞の急速な崩壊に伴い発症する、重篤な代謝異常を腫瘍溶解症候群といいます。急激に腫瘍が溶解するため腫瘍細胞に含まれる核酸、特にプリン体の血中濃度が上昇し、それを代謝しきれずに急性腎不全を起こします。その為、腫瘍の量が多く、治療に対する感受性が高い腫瘍でよく起こり、また、慢性肝疾患や腎疾患を持つ動物では発症のリスクが高くなります。
 ヒトでは尿酸が尿細管に沈着し急性腎不全を起こします。一方、犬では肝臓のウリカーゼ(尿酸酸化酵素)の働きにより尿酸をアラントイン(水溶性物質)に転換するため腎不全になりにくいと言われていますが、実際にはよく遭遇します。
 特にリンパ腫の治療早期に遭遇することが多くあります。リンパ腫は抗癌剤療法が非常に効果的な腫瘍の一つです。大きく腫大してたリンパ節が抗癌剤療法により小さくなった場合、その分、腫瘍溶解症候群のリスクが高くなりますの注意が必要です。